この人、趣味狂人なんです
與座:
私、一時期、習い事をむっちゃやってて。絵画、ピアノ、DTM(コンピュータを使った作曲)、ボイトレ(ボイストレーニング。歌のこと)、英会話、韓国語……。
石川:
何度聞いても多い(笑)
與座:
それで、自分がマックスだと思ってたんですよ。
多いだろうって自負があったんですけど、この著者は帯に書いてあるだけで14。さらにそれ以外にもあるんですよ。
それだけやって、「人生においてやった方が最後に残る趣味は何か」っていう本。

石川:
そのままのタイトルだ。
與座:
そう。最後に残る趣味は何か、最終的にしっかり結論も出ます。
本全体の趣旨としては、趣味との向き合い方について書いてあるんですけど……なんていうかこの人、趣味狂人なんです。
西村:
趣味狂人(笑)
與座:
私も習い事のピークのとき「喋り口が宗教の人みたい」って言われたことがあるんですけど、それを超える人を初めて見つけました。
石川:
趣味のことを人に習う話なんですか?
與座:
そう、習う話です。
この人が大学入って初めて能を習って、その後に声楽を習って……とにかくそれぞれの趣味に対してストイックで、文章のパンチラインがめっちゃ多いんです。
最初に「仕事と趣味はほぼ対等だ」と書いてあるんですけど、そのあとに「趣味は友達作りの場ではない」って。
石川:
ははは。ピシャリ。
與座:
ほかには飲み会の誘いに対して「酔っ払いの独り言に付き合うのは時間の無駄だから、そういう時間を削って趣味をやろう」とか。
古賀:
本当に必要ないんだね。付随する人間関係とかじゃなくて、趣味の本質だけを味わうというのが矜持。
與座:
一貫して「趣味は自分の自己満足のためではなくて、下手な玄人を目指せ」っていうんです。
下手な玄人っていうのは、例えばピアノだったら、演奏会にちょっと人が集まるぐらい。
古賀:
「ちょっと集まるぐらい」。だいぶハードル高いよ(笑)
與座:
この人は実際に声楽でリサイタルも開いてて、そこまで極めないと趣味って面白くないって言ってるんです。
普通は逆じゃないですか。余暇で自分の好きなことをやろう、仕事が辛いからやろう、っていう。じゃなくて、本気。
能も、習ってる先生の全国ツアーみたいなのについて行って、すっごく上手になったりして。
言い忘れましたけど、この人は作詞家で、もともと国文学の研究者でもあって、東京藝大の教授とかもされてたんです。だから国文学の引用って能からのものがけっこう多くて、能が仕事に活きたって。そしたら作詞とかもできるようになって、仕事も最高になりました!みたいなテンション。
なんか、「趣味っていう宗教」みたいな感じなんです。
古賀:
学者なんだね。
與座:
学者でもあり文筆家でもあるって感じですかね。
石川:
考え方がすごい学者っぽい。
共感できるところもあります
與座:
でも、共感できることもすごくいっぱい言ってるんです。例えば、この人の趣味はスポーツよりも芸術系が多いんですけど、「自分は競争に勝つより、自分の絶対値を人生においてずっと上げていきたい」とか。
あと「趣味に大事なのはまずタイムマネジメントです」とか。
西村:
普通こんだけの数を並行してできないですからね。
與座:
そう。誰でも一日に捻出できるのは1~2時間だろうから、それをうまく使う方法を本気で考えろ、みたいな。
古賀:
本当に、目がマジな本だね。バキバキバキバキ!って感じ。
與座:
そうそう。著者以外で例に挙げられてるのが、50代漁師の方がフジコ・ヘミングのライブを見て感動してピアノ始めて、毎日8時間ぐらい練習して、その後フジコ・ヘミングの前座で共演したって話があって。
西村:
はいはい、テレビでその人、見ました。
與座:
そういう人を例にあげながら「これが趣味です」って(笑)
「レベル高え!」って思って。そのぐらいやったら、ほんとに人生変わります、っていうんです。
石川:
この本は、「私はこういう風にやってきました」っていうエッセイじゃなくて、「みんなやりなよ」っていう指南書なんですか?
與座:
半々ぐらいですね。自分の生い立ちも語りつつ、趣味を本気でやりたい人のための指南書でもある。
古賀:
すごい。
與座:
これ読むまで、私は飲み会もそんなに苦手だし、なんかこういう好きな趣味ばっかやってていいのかな~みたいな、ちょっと負い目に思ってたんですけど……
古賀:
そんなのぶっ飛ばして(笑)
與座:
ぶっ飛ばして走ってる人がいるんで、すごい感動したんです。
習い事のために服は全部ユニクロ
與座:
声楽やってる方なんで、カラオケを馬鹿にしたりとか、ちょっとよくないところもあるなと(笑)
そう思うんですけど、そういう人だったからたどり着けた境地なんですよね。友達もそんなにいらないから、2人、本当に大事な時に会える人がいたら、人生は最高だからって。
古賀:
ストイック。
與座:
あと、習い事にはお金も必要だから、自分は全部ユニクロ着てますって。
で、私もそうなんですよ。習いごとにめっちゃ金かかってた時期、本当にGUとユニクロしか着てなかった(笑)
古賀:
ストイックに趣味、純粋に趣味をね。
與座:
で、すごいびっくりしたのが、こんだけ色々やってるじゃないですか。一番最後に「70代半ばの今、やってみたい趣味あれこれ」ってページが出てきて(笑)
古賀:
怖い。
與座:
めちゃめちゃ怖かったですよ。声出たんで!
でもやっぱりその、スティーブジョブズじゃないですけど、人生の趣味以外の部分はとことん削ってる。
古賀:
シンプルに、合理的に。
與座:
そうですね、別に家庭を犠牲にとかそういうわけではないんですけど、それ以外は遊びもしないし、酒も飲まないし。
古賀:
ギャンブルもやらない、みたいな。
與座:
なんなら軽蔑しすぎて、ちょっと思想が強い、みたいな(笑)
カメラのパートもあって、よく富士山を一番よく撮れるスポットとかあるじゃないですか。「あそこで撮るやつが意味わかんない。自分で探すのがカ」みたいに書いてある。
あと茶道も意味わかんないって言ってて、あれは千利休がみんなでわちゃわちゃって和やかに話するために始めたのに、いまは割れた茶碗が何千万とかしちゃって。知識階層に乗っ取られてて無理!みたいな。
古賀:
だいぶ悪口強め。
與座:
そういう過激派な一面がちらほら。
ただちょっと育ちがアッパーな人って感じもあって、庶民には届かないなって思う時もあるんです。ピアノ始める時に、いいもの買えって言われたからグランドピアノ買うとか。
石川:
まねできないところもある。
與座:
声楽も「ちゃんとした人に習った方がいいよ」つって、自分が芸大の教授だったから芸大の人に習うんですよ。
リソースが良すぎて。でもそういう運や環境の良さを抜きにしても面白い。
古賀:
いやもう、與座さんにはぴったりの本だね。
與座:
そうなんです。すごい先輩がいた!みたいな。
これからは私も堂々とユニクロ着ます(笑)
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